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富士川の河川維持流量

 令和4年2月17日の衆議院予算委員会第八分科会において、国土交通省水管理・国土保全局長から「令和4度中に富士川に河川維持流量を設定する。」との答弁が行われました。

 

 富士川における河川維持流量については、平成15年の策定された富士川水系河川整備基本方針(最終的な目標)において、「流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関しては、河川及び流域における諸調査を踏まえ、水循環機構の実態を明らかにしたうえで決定する。」とされました。

 

 しかし、その後の平成18年に策定された富士川水系河川整備計画(今後30年程度の目標)においても「調査研究を行う。・・・・利水者及び関係機関等と調整を図る。」とされ具体的な数値がこれまで示されていませんでした。

 

 現時点で国が管理する109の1級河川の内95河川では既に設定されてます。遅ればせながらになりますが、国が維持流量を設定することについては大きな意義があります。

 

 なぜなら富士川は、日本3大急流のうちの1つで、巨アユが釣れることで有名だったのですが、現在はいくつかの問題を抱え、見る影もないのが実状です。大きな問題点は4つあります。

 

① 濁りによる生息環境の悪化
 このブログでも何回か報告しましたが、近年問題となっている富士川の濁りについては、主には早川水系に由来しています。流域に崩壊地が多いため濁りの主な原因は自然発生のものと考えられます。

 しかし、それに加え土砂の掘削や投入等の工事による濁りが加わっていたのですが、これら人為的な濁りについては、関係者の努力により急速に改善が進みつつあります。

早川本流に支流の雨畑川が合流する地点(令和2年8月11日)。

この時は崩壊により堆積した土砂の流出に加え、河床掘削による人為的な濁りが加わっていたと思われる。

 

② 取水による生息環境の減少
  富士川の本支流は、水量が豊富で勾配が急であることから、古くから水力発電が盛んで、芝川も含めると流域の60箇所以上に水力発電所があり河川水は高度に利用されています。現在でも小水力発電所の開発が各所で検討されており、その数は今後も増加すると思われます。富士川の水は最終的には静岡との県境付近で発電用に取水されその使用許可水量の総量は、毎秒75立法㍍になります。

 発電事業者と漁協の協議により、その地点で 維持流量として流されるのは多い季節でも毎秒 5立方㍍になります。加えて山が海に迫った地形であることから、これら取水された水は富士川へ戻ることなく駿河湾に直接注いでいます。

富士川中流にある水力発電所(最大使用水量:66立方㍍/秒、有効落差:70m)

 

③ 河川横断工作物による遡上阻害
  富士川本川の取水用堰堤には魚道が設置されていますが、適切な遡上条件になっていない所も有ります。加えて、 近年の河床低下に伴い堰堤以外の床固工でも落差が拡大し、流量によっては遡上しにくい箇所がいくつかあります。

四ヶ郷堰右岸魚道の折り返し部分。

堰堤下流の河床が低下したことにより、魚道最下段の落差が拡大して、ここからは遡上できなくなっている。

 

④ 砂の流入による生息環境の減少

 富士川の西側にある南アルプスは標高が日本第2位の北岳、第3位の間ノ岳を有していますが、この流域は世界有数の隆起スピードで隆起が続いていて、さらに糸魚川静岡構造線があることなどから、土砂生産が非常に盛んです。

 このため富士川の上流は以前から釜無川(釜とは淵のことを意味しており、淵の無い川の意味)と呼ばれてきましたが、近年出水時に淵が砂で埋まる傾向が更に加速されています。

大武川の土砂堆積&流出状況(令和23年10月12日、駒城橋下流)

出水で流下堆積した砂が、徐々に削られて流出し、下流の淵を埋めている。

 

 今回の国の決定は、漁業関係者の願いに加え、県内の早川町や南部町の要望、静岡県の富士宮市議会と富士市議会の請願など流域の関係者の熱い思いがようやく通じたのだと思います。

 このことにより富士川の抱える問題の内の1つが、大きく前進することを期待したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

県漁連としては巨アユの富士川が復活するよう、引きつづき関係機関と連携し、活動を進めてゆきたいと思います。

2022年3月24日(木)

山梨県の釣り情報|山梨県漁業協同組合連合会

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